give up「(を) 諦める」のように,1つの動詞がその後ろに来る単語とセットになって特殊な意味を表すもの — 熟語があります。そうした動詞は【群動詞】(phrasal verb) と呼ばれ,多くの英語学習者を悩ませています。
英語学習者にしてみれば,何で熟語なんて面倒くさいものが使われるのか不思議に思うこともあるかもしれません。その理由を少し考えてみます。
例えば,disembark「下船する」という (長くてカタい) 単語を頑張って覚えたとしましょう。でも,実際には get off「降りる」という表現の方が圧倒的によく使われます。これは日本語でも同じことで,「下船する」より「降りる」の方が普通ですよね。このように,ふつうは簡単な単語の組合せの方が誰にでも解りやすく,そのため好まれるのです。
これは,get「~になる」+ off「離れて」の2単語に分解してみると少し解りやすいと思います。「離れた状態になる」のだから,「乗り物から降りる」意味になるというわけです。
ここで特に重要なのが off です。これは一見簡単な単語ですが,その意味を頭の中でイメージできているでしょうか? それができるようになると,群動詞の半分以上は丸暗記する必要は (あまり) ないと個人的には思っています。例えば,off の前に来る動詞を他のものに換えてみたのが次のような表現です。
get off 「(乗り物を) 降りる」
take off 「(飛行機が) 離陸する」
lift off 「(宇宙船が) 発進する」
fall off 「(数値が) 落ち込む」
go off 「突然発する (→ 爆発する; 停電する; (警報が) 鳴り響く)」
これらはどれも「何かから離れていく,出発する」ような意味合いを含んでいます。
逆に,off の対義語 on は「何かにくっついている,続いていく」ような意味合いです。例を見てみましょう。
go on 「続いていく」
carry on 「続いていく; (めげずに) 続ける」
hold on 「しがみつく; 踏みとどまる; (電話を切らずに) 待つ」
hang on 「しがみつく; 踏みとどまる; (電話を切らずに) 待つ」
move on 「(辛いことがあった後も) 前に進み続ける」
この on ←→ off のような単語 (【副詞】といいます) のイメージがつかめるようになると,群動詞の半分くらいは,一度その意味を聞けばもし忘れてもすぐに思い出せることでしょう。
Getting off the plane
それでも丸暗記の必要性は残るじゃないかって? 残念ながらそれはその通りです。それは,熟語にも2通りあるからです。
1つは,この get off のようにバラバラに分解すると意味が想像できる,あるいは忘れても思い出しやすいもの。
そしてもう1つは,その熟語を構成する単語を別々に辞書で引いても,熟語全体の意味を全く想像できないものです。
実は,日本語にもこうした表現はたくさんあります。例えば「持ち上げる」。これを「持つ」+「上げる」の2語の組合せであるというふうに理解したとしても,全体の意味「手に持って上に上げる」をなんとなく想像できそうですね。
しかし「持ち上げる」は,そこから派生して「おだてる」意味ももつようになりました。こうなると,「持つ」「上げる」を別々に辞書で引いてみたところでそんな複雑な意味は想像しようがありません。これこそまさしく熟語と言えます。英語にも,こうした表現はたくさんあります。こればっかりはどうしようもありません。使いながら丸ごと暗記しましょう。
この記事では,前者のように各単語に分解すると解りやすい表現を取り上げました。こうしたものにはいくつかパターンがあるので,それを覚えておくことで色々と応用が利くからです。
今回は群動詞の動詞を他のものに入れ換えてみるということをやりましたが,次回は on ←→ off のような【副詞】を他のものに入れ換えてみるということをやってみたいと思います。