1 サインポスティングとは?
前の記事では,文章を構成する際,スキミング (skimming) によってキーワードが何か読者に解りやすいような構造にするべきであること,スキャニング (scanning) によってそのキーワードを探しやすいようにキーワードを何度も言い換えておくべきことを話しました。今回は,英作文の際に直接的に使えるテクニック,サインポスティング (signposting) について書きます。
サインポスティング (signposting) とは,読者が「今自分は文章全体のどこを読んでいるのか」を見失わないよう,道路標識となる語句を配置することです。読んでいる部分は事実なのか意見なのか,一般論なのか特殊な事例なのか,1つめのポイントなのか2つ目のポイントなのかといった情報を,サインポスティングは読者に与えてくれます。 サインポスティングはスキミング・スキャニングのような速読術ではありません。テクニカルライティング (technical writing) や アカデミックライティング (academic writing) と呼ばれる,ライティング技術の1つです。しかし,これについて知っておくとリーディングにも非常に役立ちます。
なお,日本ではサインポスティングは「ディスコースマーカー」と呼ばれているケースが多いようです。discourse markers も,確かにサインポスティングで用いられるような接続詞を含む呼称なのですが,通例 "oh", "well", "now", "then", "you know", "I mean" 等の無意味語 (相槌や「今私が話してるとこだから最後まで聴いて」というサイン) を指します。その意味で,signposting の方がよりポイントを絞った呼称と言えます。
2 サインポスティングの種類とは?
サインポスティング,つまり「話の流れを示す標識」の役割は,次のように大きく3つに分けることができます。
サインポスティング (signposting) とは,読者が「今自分は文章全体のどこを読んでいるのか」を見失わないよう,道路標識となる語句を配置することです。読んでいる部分は事実なのか意見なのか,一般論なのか特殊な事例なのか,1つめのポイントなのか2つ目のポイントなのかといった情報を,サインポスティングは読者に与えてくれます。 サインポスティングはスキミング・スキャニングのような速読術ではありません。テクニカルライティング (technical writing) や アカデミックライティング (academic writing) と呼ばれる,ライティング技術の1つです。しかし,これについて知っておくとリーディングにも非常に役立ちます。
なお,日本ではサインポスティングは「ディスコースマーカー」と呼ばれているケースが多いようです。discourse markers も,確かにサインポスティングで用いられるような接続詞を含む呼称なのですが,通例 "oh", "well", "now", "then", "you know", "I mean" 等の無意味語 (相槌や「今私が話してるとこだから最後まで聴いて」というサイン) を指します。その意味で,signposting の方がよりポイントを絞った呼称と言えます。
2 サインポスティングの種類とは?
サインポスティング,つまり「話の流れを示す標識」の役割は,次のように大きく3つに分けることができます。
1) 複数の話を直列に並べる 2) 複数の話を並列に並べる (合流) 3) 複数の話を並列に並べる (分岐) 以下,もう少し詳しく見てみましょう。ここでは,英語での表現を紹介する前に,まず日本語でエッセンスだけを紹介していきます。
2.1 複数の話を直列に並べる
2.1.1 「AのときBである」を示すサインポスティング
話の流れが「AのときBである,BのときCである,...」と一直線に進む場合に使えます。例えば...結果・結論のみ 原因 → 結果 仮定 → 結論 時系列
「11km先 箱根 → 45km先 沼津 → 100km先 静岡」
2.1.2 「AとはA'である」を示すサインポスティング
また,筆者の主張を強化するため,それを解りやすく言い換えたり,短くまとめたり,例を挙げたりすることがよくあります。その場合,以下の表現が有効です。 主張 = 主張' 主張 → その例 これを文章中で使われる表現に直すと,次のようになります。 [A ≒ A' (1) 実は,それどころか] [A ≒ A' (2) 言い換えると] [A ≒ A' (3) 要約すると] [例えば〜] [〜等]2.2 複数の話を並列に並べる (合流)
複数の並行する話や対立する話を紹介するのに使われます。並行すると言っても,これまでの話と無関係な別の話をするとは限りません。図では脇から合流してくる道路が描かれていますが,正面からやってくる道とぶつかる場合もあります。
つまり,これまでの話と真っ向から対立するような論点を紹介したいときも,読み手にそれを知らせる標識が必要になるわけです。以下がその例です。 [その一方で] [ところで] [一般的には〜と言われているが] [〜にもかかわらず] このような語句は,それまでの話と矛盾する話をしようとしていることを示唆します。しかし,だからといって矛盾する複数の話をうまく統合しなくてはならないわけではありません。現実には矛盾の解決までは踏み込まず,問題提起で終わる形の文章も多く見られます。 「ある大学の研究グループは〜〜と主張している。一方,別の大学の研究グループはこれに異を唱える」→「この論争にまだ決着はついていない」「あなたはどちらが正しいと思いますか?」といった具合です。 また,「一般的には〜と言われているが」+「私が言いたいことは〜」のコンボは,筆者の主張を強調するための常套句です。実際の新聞や雑誌の記事がそういう書き方になっていないかどうか,ぜひ注意して観察してみて下さい。
2.3 複数の話を並列に並べる (分岐)
途中で場合分けを必要とする話で使われます。あまりに場合分けが多い文章では,さらに箇条書きや章立てが行われます。[話題1については,話題2については,...] [第1に,第2に,...,最後に] [それに加えて]
ところで,日本人の書く英文を観察していると,
About ~,
As for ~,
Regarding ~,
With regards to ~,
のような表現がよく使われています。"As for me," を「私個人としましては,」のようなつもりで使っているもの,話題を提供するのに「〜については」と言ってしまっているものです。
しかし,これらは日本語特有の表現に引っ張られたもので,適正な用例ではありません。英語では,こうした表現は特に場合分けの際に使われます。例えば,
i) 実験の目的
ii) 実験装置
iii) 実験結果と考察
a) 質問1への回答
b) 質問2への回答
c) 質問3への回答
というように,話を切り分けたいときに使うとよいです。
3 英文を書く際のサインポスティングの活用法
道路標識となる表現には決まり文句が多いです。使いこなせるようになるには,実際に文章を作って使いながら覚えるのがよいでしょう。サインポスティングに用いられる語句には様々なものがありますが,どれも1度は自分で使ってみることが大事です。ただ,それには一つの表現につき一つずつ別の文章を作った方がよいでしょう。 似た意味の言葉が1つの文章中に何度も登場すると変だからです。
次回は,サインポスティングを使って実際に文章を組み立てるところを順を追って解説します。
次回は,サインポスティングを使って実際に文章を組み立てるところを順を追って解説します。